岡山のすみれ
参考にさせていただいた「岡山懸植物目録」のおかげで、とてもおもしろい経験をさせていただきました。この資料ですが、「古いので」との説明で手渡されたのはマイクロフィルムだったのです。想定外のことに驚きながら、どちらかというとワクワクしながら、マイクロ資料閲覧室に出向き、キョロキョロと周囲の様子を見渡して真似をしてみるのです。投影機で見るのですね(なぁるほど)。でも、第一歩のスイッチの位置が分かりません。係の方に教えてもらいながら、なんとか閲覧に成功して、必要なページをコピーしました(注:現在はNDLデジタルコレクションで簡単に見ることができます)。
さて、その資料ですが、なんと手書きだったです。20部限定の非売品だと補足説明がありましたが、その経緯が記載されていました。
『昭和十年八月牧野冨太郎先生我ガ岡山懸ニ親シク採集ヲ指導セラル。之ヲ記念センガタメニ、尚又先生ニ答ヘ奉ランガタメニ急ギ稿ヲ作リテ假ニ此の小冊子ヲ為シタリ。本冊子ハ二十部ヲ限定シテ急ニ発行ス。』だそうです。
内容ですが、一部を割愛したことを補足しておきます。一部とは、先ず「ハヒスミレ」です。学名を見ると "
Viola diffusa Ging" とあるからにはツクシスミレということになります。また、ナンザンスミレも記載されていました。やはり学名を見ると "
Viola dissecta Ledeb. v.
chaerophylloides Makino" とありますが、これは確かにナンザンスミレのシノニムです。でも、岡山県にツクシスミレとナンザンスミレが自生するのでしょうか。しばらくペンディングです。他に交雑種が2種、マルバタチツボスミレとヒメキクバスミレが記載されていました。
(2009/09/20)
信用できる個人の情報を追加させていただきました。参考資料A) では不十分であることがわかります。別の資料を物色したいところです。
(2011/01/04)
インターネット上で『岡山県野生生物目録2009』をダウンロードできました。この記載情報で更新をしますと、上記で利用していた個人の情報が極めて正しいことが分かったのです。新たに追加した項目はヒカゲスミレ、エゾノタチツボスミレ、ヒメアギスミレのみです。
(2013/06/18)
岡山在住の方から情報をいただき、『岡山県野生生物目録2019』をダウンロードできました。尚、ご助言の通り、新たに追加した項目がありました。エゾノアオイスミレ、コミヤマスミレ、ナガハシスミレの3種です(外来種は割愛しました)。
情報をいただいた方に、早速、御礼メールバックをしましたところ、送信エラーになってしまいました。メアドを手入力するシステムの問題点ですね。連絡する術がありませんので、ここで御礼申し上げる次第です。
(2020/07/25)
岡山県にはすみれの季節以外に何度か足を運んでいるのですが、広島県から鳥取県へ抜けたすみれの旅では、残念ながら、時間が足りなって、大急ぎで通過する羽目になってしまいました。近いうちに、ぜひ、じっくりと歩き回りたいものです。
(2020/07/25)
書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました 〇=自生確認
記号 |
参考資料 |
著者、編者 |
発行/出版 |
発行 |
A) |
岡山懸植物目録 |
佐藤清明 |
ムルス学会 |
1935年9月20日 |
B) |
岡山県野生生物目録2009 |
岡山県野生動植物調査検討会 |
岡山県 |
2009年3月 |
C) |
岡山県野生生物目録2019 |
岡山県野生動植物調査検討会 |
岡山県 |
2020年3月 |
|
|
【参考:気象統計情報】 岡山市の例 (総務省統計局資料を利用) |
各地のすみれ 掲載種について
「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。
それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。
「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。
(つぶやきの棚)徒然草