長崎のすみれ
 坂の多い長崎の街に宿泊したのですが、どちらかと言うと、珍しく観光になってしまいました。じっくり走り回ったのは対馬で、ナンザンスミレが咲く対馬も長崎県に含まれます。あちらにもこちらにもコスミレが咲く島で、シロバナツクシコスミレも見られましたので追加しておきます。なんとか情報を手繰ってナンザンスミレをみつけることができたことが記憶に鮮明です。蛇足ながら、同行した家内はツシマヤマネコを目撃したらしく、なんとも、うらやましい限りです。撮影して確認できていたら、元来は目撃報告をすべきなのでしょう。
 参考にした「長崎県植物誌」にはミドリシハイスミレ、コテリハタチツボスミレという名前が登場します。前者は標準和名として認められているようですが、後者は聞いたことがありません。対馬でコタチツボスミレを観察していますが、逆に登場していないことから、このコタチツボスミレを意味しているものと判断しました。シーボルトが長崎で採集した標本を持ち帰ったことはよく知られていて、それが記載されていないことは実に不思議な感じがします。
 また、ウンゼンスミレが独立種的に登場します。記載されている学名から交雑種を意味する 'x' が脱落していますが、誤植と言うより勘違いされたのかも知れません。
(2009/08/31)

 久しぶりの訪れた春は、開花の早い年でした。なんとか、いろいろなすみれたちに出逢いましたが、アカバナスミレについては、それらしい個体のしおれかけた花を見ただけで、正確には花色を確認しきれませんでした。
(2023/05/01)


種(無茎) 変種または品種 参考資料 補足
アカネスミレ A)
アカバナスミレ 開花時期に遅れ、確認しきれませんでした
アリアケスミレ
エイザンスミレ A)
シロバナエゾスミレ
コスミレ A)
シロバナツクシコスミレ
コミヤマスミレ A)
シコクスミレ A)
シハイスミレ A)
フイリシハイスミレ
ミドリシハイスミレ A)
シロスミレホソバシロスミレ
スミレ A)
スミレ(白花変種) A) (シロバナスミレと記載)
ホコバスミレ A)
ナンザンスミレ A)
ノジスミレ A)
ヒメスミレ A)
ヒメミヤマスミレ A)
フモトスミレ A)
マルバスミレ A) ケマルバスミレ
種(有茎) 変種または品種 参考資料 補足
アオイスミレ A)
オオタチツボスミレ A)
タチツボスミレ A)
オトメスミレ
コタチツボスミレ (コテリハタチツボスミレと記載)
シロバナタチツボスミレ A)
ツクシスミレ A) 絶滅危惧?
ナガバノタチツボスミレ A)
ニオイタチツボスミレ A)
ニョイスミレ A) (ツボスミレと記載)
アギスミレ A)
種(自然交雑) 個体数 参考資料 補足
ウンゼンスミレ A) アカネスミレ x (フイリ)シハスミレ
ハリマスミレ スミレ x アリアケスミレ
ヘイリンジスミレ ヒメスミレ x スミレ
種(参考) 個体数 参考資料 補足
シロコスミレ 分布の中心は国外だが、自生との意見を採用

書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました 〇=自生確認

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 長崎県植物誌 外山三郎 長崎県植物学会 1980年7月1日

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 長崎市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/08/31) Latest Update 2024/08/06 [80KB]

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