ヒメミヤマスミレ [フモトスミレの亜種とする見解あり] (姫深山菫)
- フイリヒメミヤマスミレ (斑入姫深山菫)
- ヤクシマミヤマスミレ (屋久島深山菫)
葉の表面に白い微毛がみえるが、それなのに光沢感が強いので、少し驚かされた
神奈川県足柄下郡 2024年4月28日 alt.=950~1,000
フモトスミレに良く似ているが、植物体は少し大きい
小さな白い花をつけるスミレで、薄紅色の距
がかわいらしい
静岡県富士宮市 2000年5月3日
田貫湖
2005年の個体群とほぼ同地域で撮影しました。ヒメミヤマスミレよりフモトスミレに近い印象があります。
しかしながら、この地域のフモトスミレは右側のような姿をしており、まぁ、花も葉も異なっていますね。
- 静岡県富士宮市 2006年4月17日
- 静岡県富士宮市 2006年4月10日
フモトスミレ 田貫湖
ヒメミヤマスミレ 東京都 2023年3月30日 植栽 フイリヒメミヤマスミレ
愛媛県西条市 2009年5月10日 alt.=1,070m
高知県高岡郡 2009年5月9日 alt.=500m
分類 |
ミヤマスミレ類 |
学名 |
基本種 |
ヒメミヤマスミレ Viola boissieuana Makino Published in: Bot. Mag. Tokyo, 16: 127. (1902) |
変種 |
ヤクシマミヤマスミレ Viola boissieuana var. pseudo-selkirkii (Nakai) Yahara Published in: J. Fac. Sci. Univ. Tokyo, Bot., 14(2): 96. (1987) |
品種 |
フイリヒメミヤマスミレ Viola boissieuana sp. |
亜種 |
Viola sieboldi Maxim. ssp. boissieuana (Makino) F.Maek. et T.Hashim.
Viola sieboldi Maxim. ssp. boissieuana (Makino) F.Maek. et T.Hashim. var. pseudoselkirkii (Nakai) F.Maek. et T.Hashim. f. albovariegata E.Hama (1976)
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異名 |
Viola pseudoselkirkii Nakai Published in: Bull. Soc. Bot. France, 72: 195. (1925)
Viola pseudoselkirkii Nakai (1925)
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由来 |
Viola boissieuana : 人名に由来 Henri de Boissieu (1871-1912), フランス人植物学者。 |
外語一般名 |
【韓】각시제비꽃 |
茎の形態 |
無茎種 |
生育環境 |
照葉樹林帯林縁に見られるが、垂直分布が広く、亜高山針葉樹林帯まで分布する。
フモトスミレが明るい草地、林縁等に見られるのに比べて、暗く多湿な場所を好む。
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分布 |
国内 |
東海から四国、九州を結ぶライン(太平洋側)で見られる。 |
海外 |
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補足 |
(注:韓国に分布するとの情報がある) |
花の特徴 |
形状 |
小輪。 |
色 |
白い花が典型品。唇弁と側弁に紅紫条が入る。純白花もあるとされるが、異説がある |
距 |
赤紫色、円筒形で短い。 |
花期 |
少し遅め(5月)。 |
花柱 |
カマキリの頭形(虫頭形)。先端が明確に左右に膨らむ。 |
芳香 |
(未確認)芳香があるとされる。 |
補足 |
側弁基部に毛があるものと無いものに分かれる。 |
葉の特徴 |
形状 |
三角に近い心形。先端は尖り、基部は深めに湾入した丸い心形。粗い鋸歯がある。 |
色 |
表裏とも明るい緑色(フモトスミレと異なり、通常、紫色を帯びない)。 |
補足 |
葉質は薄い。表裏に毛があるものと無いものに分かれる。葉脈に沿って白斑が入る型をフイリヒメミヤマスミレと呼ぶ。 |
種の特徴 |
形状 |
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色 |
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補足 |
朔果にマルバスミレに似た斑点があるとの情報がある(未確認)。 |
根の特徴 |
標準的な主根と細いひげ根で構成。 |
絶滅危惧情報 |
埼玉県:絶滅危惧Ⅰ類、群馬県:絶滅危惧Ⅰ類、山口県:絶滅危惧Ⅰ類、長崎県:絶滅危惧Ⅱ類 |
基準標本 |
高知県吾川郡 1888/4/22 渡辺荘兵衛
高知県高岡郡 1893/5 牧野富太郎 (横倉山)
愛媛県(石鎚山)1888/8/9 谷田部
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染色体数 |
2n=24 |
参考情報 |
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その他 |
花の形状や側弁の毛、葉の裏面の色等、特徴の異なるグループが認められている。
フモトスミレとの違いとして、鋸歯が粗くて裏面が紫色を帯びないとされるが、これは典型品の特徴を示しているのであり、葉が披針形で裏面が紫色を帯びるグループも九州等で認められ、同定の決定打にはならない面をのぞかせる。
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このすみれについては、かなり困っています。特徴が異なるグループの一つはトウカイスミレとして別種扱いとなりました。ではシンプルになったかというと、決してそうでもありません。資料は古いままのものが多く、まだ調整中というところでしょうか。
グループ分けをした方が分かりやすいと思われます。変異として白斑が入るものがあります。
【東海型】トウカイスミレとして別種に分離。
東海地方などの太平洋岸に分布する小型種。花色は表裏とも淡い紫、葉は両面が明るい緑色。距は赤紫で丸い。
【横倉型】関東以西に分布。
花茎が長く、花色は乳白色地に赤紫条が入る。花弁は細長い。葉表面が明緑色で裏面は白っぽい。鋸歯は粗い。基部は深い心形。
【高隈型】主に九州に分布。
花茎が長く、花色は乳白色地に赤紫条が入る。花弁は細長い。葉裏面が紫掛っている。基部は深い心形。
2007/05/10
ヒメミヤマスミレは「フモトスミレの亜種」とする表現が多いようです。学名については紆余曲折を経て、現在でも一貫性を欠く状況と言えます。このサイトを編集するにあたり、指標としている資料があるのですが、その内容と多くの書籍の記載を比較した上で、自分なりの判断をしています。このすみれは、前者と後者の記載が際立って異なる稀有な例なのです。
2009/03/06
頼りにしているオープンアクセスの生物多様性情報DBで情報を再取得してみて、少し驚きました。最近(2022年)の採集データには画像が添付されているのですが、どう見ても、トウカイスミレの方です。混じっているだろうとは思っていたのですが、もう「別種」との認識が一般化していたというのに、残念な話です。今年、めでたく「裸名」を卒業した訳ですが、これから、データベースの情報が分離されるとは想定できませんね。
2023/08/10