高知のすみれ
 第一刷が2009年3月15日が発行された「高知県植物誌」を、一度訪問してみたかった「高知県立牧野植物園」で拝見することができました。運が良かったと思います。この書籍は、他で見られる同様の書籍と比較して安価である8,000円(税抜き)で頒布されていて、標本画像検索システムという説明があるDVD-ROMが付属しています。また、この書籍の内容に貢献しているのは「高知県の植物」を発行している土佐植物研究会の存在ではないかと思います。
 トウカイスミレ(裸名→新種として発表、2023/04/20)をヒメミヤマスミレの項で、タチツボスミレ(山陰型)をコタチツボスミレとして扱っており、現段階としては適切な表現かもしれません。帰化植物としてアメリカスミレサイシン(ソロリア)が記載されていますが、ここでは省略しました。
(2009/05/22)

 改めて「高知県植物誌」の記載内容を読み直して調整しました。一歩踏み込んだ記載が多いのですが、一方でアヤコスミレ、トサスミレという名称も出てきて、取り扱いに悩むところがあります。
(2012/12/03)

 さて、困ったことが起きていました。「高知県の植生と植物相」にシチトウスミレとイソタチツボスミレが記載されているとのことです。イソタチツボスミレはツヤスミレだろうと判断していましたが、シチトウスミレとうまく区別ができていたのか、微妙な問題が残っていたのです。「高知県植物誌」は区別しないと明示していました。その妥当性は横に置くとして、両方が記載されているのは高知県だけだと思います。それで、お世話になっている土佐植物研究会のすみれ好きさんに問い合わせをしてみました。結果は「両方ある」でした。因みに、この良く似た2種は、光沢がある理由が違っており、別の型と認識しています。
(2013/01/01)


種(無茎) 変種または品種 参考資料 補足
アカネスミレ A) B)
オカスミレ A)
アケボノスミレ A) B)
アリアケスミレ A) B)
エイザンスミレ A) B)
ヒトツバエゾスミレ A) 単葉変種、標本なし
コスミレ A) B)
シロバナツクシコスミレ A)
コミヤマスミレ A) B)
サクラスミレ A) B)
シコクスミレ A) B)
シコクミヤマスミレ B) 俗名
シハイスミレ A) B)
シロバナシハイスミレ A)
フイリシハイスミレ A)
(シロスミレ)ホソバシロスミレ A) B)
スミレ A) B) ケスミレ、ケナシスミレ
アツバスミレ
シロガネスミレ A)
ホコバスミレ A) B)
トウカイスミレ 生育情報があると記載
ナガバノスミレサイシン A) B) 隔離分布
ナンザンスミレヒゴスミレ A) B)
ノジスミレ A) B) ケナシノジスミレ
ヒメスミレ A) B) 全体が多毛でノジスミレに近い
ヒメミヤマスミレ A) B)
フジスミレヒナスミレ A) B) イヌガタケスミレ
フモトスミレ A) B)
フイリフモトスミレ 記載されていない
マルバスミレ A) B)
ミヤマスミレ A)
種(有茎) 変種または品種 参考資料 補足
アオイスミレ A) B)
キスミレ A) B) 絶滅危惧
キバナノコマノツメ A) B)
タチツボスミレ A) B)
オトメスミレ A)
ケイリュウタチツボスミレ A)
コタチツボスミレ A) B) A:山陰型と補足がある
シチトウスミレ A) B) A:ツヤスミレと区別しないと記載、B:区別して両方を記載
シロバナタチツボスミレ A)
ツヤスミレ B) (イソタチツボスミレと記載)
ミドリタチツボスミレ 記載されていない
ナガバノタチツボスミレ A) B) A:ケナガバタチツボスミレ
ニオイタチツボスミレ A) B)
ニョイスミレ A) B) (ツボスミレと記載)
アギスミレ A)
ヒメアギスミレ
種(自然交雑) 参考資料 補足
スルガキクバスミレ B) エイザンスミレ x フモトスミレ
フギレシハイスミレ B) エイザンスミレ x シハイスミレ

書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました 〇=自生確認

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 高知県植物誌 高知県、(財)高知県牧野記念財団 (企画発行)高知県 2009年3月15日
B) 高知県の植物 第14号 四国産スミレ属の研究(愛媛県産植物の種類より) 土佐植物研究会 土佐植物研究会 1998年1月

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 高知市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/05/22) Latest Update 2024/08/06 [90KB]

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