シハイスミレ (紫背菫)

シハイスミレ シハイスミレ
  • 大分県(九重町) 2006年4月20日
  • 大分県(九重町) 2006年4月19日
シハイスミレ
大分県 2009年4月15日

 林の中で出逢ったシハイスミレは、とても美しくて、元気いっぱいに咲いていました。栽培品を見て持っていたイメージとは、かなり違うなぁという印象です。また、斑の入り方はアバウトなものであることも分かりました。斑のない個体のそばに、薄く中央の葉脈HELP!だけに白い斑がある個体、つまりコンピラスミレと呼ぶことができそうなものもあったのです。一面に咲いているシハイスミレの紅色に感動した直後、自然交雑種であるフモトシハイスミレを見つけて、夢中になってシャッターを切ったものです。実は、一度、熊本まで移動してから大分まで戻りました。観察が足りない気がして仕方がなかったのです。おかげで、もう1種類の不思議なすみれに出逢うことになるのですが・・・。
2006/04/27

 改めて、大分でシハイスミレの葉を確認してきました。花期の葉がご覧の通りです。これでは「ちっとも紫背菫じゃない」と言われてしまいそうです。このエリアは3回目で、それなりに広い範囲を観察してみましたが、結果は同じです。鹿児島には葉の裏面が緑色を呈するシハイスミレが多く、ミドリシハイスミレ(f. concolor)と呼ばれているそうです。この個体が該当するのか、明確な定義を確認する必要がありそうです。いづれにしても、花が美しいのでトップに置いていますが、標準的な型とは言えないようです。
2010/02/15

分類 ミヤマスミレ類
学名 基本種 シハイスミレ Viola violacea Makino Published in: Ill. Fl. Jap. 1: t. 67. (1891)
変種
<標準和名として扱うもの>
マキノスミレ Viola violacea var. makinoi (Boiss.) Hiyama ex F.Maek. Published in: Enum. Spermatophytarum Japon. 3: 222 (1954)

フイリマキノスミレ Viola violacea var. makinoi f. variegata E.Hama Published in: Wild Violets Jap. Col.: 213, t. 88; 13-15 (1975)

シナノスミレ Viola violacea var. tanakaeana (Makino) T.Hashim. ex E.Hama & K.Nakaj. Published in: J. Jap. Bot. 51: 342 (1976)
<上記以外>
フイリシナノスミレ Viola violacea var. tanakaeana f. okuharae E.Hama
品種
<標準和名として扱うもの>
コンピラスミレ Viola violacea f. pictifolia Honda Published in: J. Jap. Bot. 24: 30 (1949)
シロバナシハイスミレ Viola violacea f. albida (Nakai) F.Maek. Published in: Enum. Spermatophytarum Japon. 3: 222 (1954)
フイリシハイスミレ Viola violacea f. versicolor E.Hama Published in: J. Jap. Bot., 51(11): 341. (1976)
ミドリシハイスミレ Viola violacea f. concolor Nakash. Published in: J. Nat. Hist. Soc. Fukuoka 2: 164 (1938)
<上記以外>
アカバナシハイスミレ Viola violacea f. rubra E.Hama Published in: J. Jap. Bot., 51(11): 342. (1976)
異名
マキノスミレ Viola makinoi H.Boissieu Published in: Bull. Soc. Bot. Fr. 47: 320. (1900)
Viola obtusosagitta Koidz. Published in: Bot. Mag. (Tokyo) 39:29. (1925)
Viola sacraricola Nakai Published in: Bot. Mag. (Tokyo) 42:561. (1928)
Viola tanakaeana Makino Published in: Bot. Mag. (Tokyo) 17:86. (1903)
由来 violacea : 紫紅色の、菫色の makinoi : 人名由来、植物学者の牧野富太郎博士WHO!
外語一般名 【中】紫背堇菜、【韓】자주잎제비꽃
茎の形態 無茎種
生育環境 山地の明るく乾燥気味の林下を好む。
分布 国内 本州、四国、九州に分布。東日本では稀だが、西日本では個体数が多い。
海外 朝鮮半島南部。
補足 関東や東北地方で見られる個体群がシハイスミレと同定されることがある。
花の特徴 形状 中輪。変異が多い。通常、側弁は無毛。
色 淡い紫色から紅紫色。花茎が赤いものが多い。
距 長めの円筒状で、先が上に曲がるものが多い。色は白から紫色。
花期 普通。
花柱 カマキリの頭形。
芳香 あり。
補足 萼片は披針形HELP!、付属体は丸く、通常は全縁。
葉の特徴 形状 三角状狭卵型(長卵形、披針形)。やや厚め。基部は深めに湾入する心形。
色 表面は光沢のある深緑色が多く、稀に白斑が見られる。裏面は紫色を帯びる。
補足 葉柄は斜めに伸びる。無毛。疎らに毛が見られることがある。
種の特徴 形状
色
補足 球形に近い倒卵形。
根の特徴
絶滅危惧情報 シハイスミレ:宮城県:絶滅危惧Ⅱ類、山形県:絶滅危惧Ⅱ類、新潟県:地域個体群、群馬県:絶滅危惧Ⅰ類、東京都:準絶滅危惧種、鹿児島県:絶滅危惧Ⅱ類
シナノスミレ:長野県:絶滅危惧Ⅰ類
基準標本 シハイスミレ : 越後、伊豆、近江、大和、紀伊、阿波、土佐
(以下、京都大学収蔵)
フイリシハイスミレ : 兵庫県佐用郡佐用町 船越山 1965.5.5 by K. Utsumi
アカバナシハイスミレ : 大分県由布市湯布院町 塚原温泉 1963.4.27 by E.Hama
コンピラスミレ : 香川県仲多度郡琴平町 象頭山 1948 by M. Honda
フイリシナノスミレ : 長野県木曽郡 神坂 1965.5.18 by H. Okuhara
[注] 神坂は現在の岐阜県中津川市に含まれる可能性がある(越境合併のため)
染色体数 2n=24
参考情報 スミレ属ミヤマスミレ亜節(スミレ科)の系統と多様化に関する研究 (山形大学)吉田政敬氏
その他 1891年、牧野富太郎博士WHO!が高知県吾川村名野川(当時)などの標本をもとに命名発表した。*(出典)
葉の裏面が紫色を帯びることが「紫背」という名の由来とされる。
変種のマキノスミレとの特徴的な違いとして、花を斜めに展開する点が挙げられる。
多様な変異があり、同定が難しいもののひとつ。
ハグロシハイスミレ(俗称:褐色の葉を持つ、岐阜県から岡山県近辺の山地で見られる)
フイリシハイスミレ コンピラスミレ
フイリシハイスミレ(葉黒型) コンピラスミレ
2001年4月9日 植栽

シハイスミレ シハイスミレ
東京都 2006年4月3日 植栽

シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
広島県 2007年4月29日

シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
東京都 2009年3月29日 alt.=233m
シハイスミレ シハイスミレ
東京都 2009年11月28日

 関東では著しく自生が少ないシハイスミレやマキノスミレは興味深い存在です。各部の特徴が両者の中間的な個体が多いと言われます。できるだけ自生地を訪ねて、簡易的な比較を試みようと思っていました。早速、千葉県に続き、山梨県に近い東京都のシハイスミレを観察することができました。もう少し中間的なのかと思っていたのですが、花がきりりとした印象を与えること、葉柄が長めであること、植物体全体が相当に小さいことなどが少し気になる程度で、全体として、シハイスミレの特徴の方がよく出ていると思います。
2009/04/01

 この自生地の個体ですが、秋には葉の裏が緑色をしていると報告されています。シハイスミレとされているのですが、同定する特徴の一つを失ってしまったことになりますね。
2009/11/25

 自分の目で確認するため、春と同じ場所に出かけてみました。葉の裏面はご覧の通り、白っぽい緑色です。春より葉身HELP!の幅があって、面積も少し大きいかも知れません。この自生地は夏場までは「紫背」なのだそうですが、秋には緑色になるという情報があります。同様に、関西、山陰などの自生品も秋には紫色が消えてしまうとされています。「日本スミレ図譜(井波一雄氏WHO!)」の記載では、葉の裏面から紫色が消えるか否かでシハイスミレとマキノスミレを区別できるとありますが、そう単純ではなさそうです。
2009/11/29


シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ
愛媛県西条市 2009年5月9日 alt.=1,680m
シハイスミレ
愛媛県越智郡 2009年5月8日 alt.=320
 四国でとても芳香が強い群落を観察しました。1,700mに近い標高で咲く多くの花々が醸し出す芳香は、森林限界を超えて樹木が疎らなために覆うものがない開放的な環境にも関わらず、一面、香水をまき散らしたように拡がっていました。国内に産するすみれではニオイタチツボスミレでもこれほどの芳香は感じられません。ただ、少し離れた場所に咲く群落では、特に強く感じることはありませんでした。開花したばかりの新鮮な花が強い芳香を出しそうに予測しますが、環境の影響もありそうですね。興味津津です。
2009/05/21

シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ
新潟県西蒲原郡 2010年4月27日 alt.=120m
 新潟の低山で観察しました。道路をゆっくり歩いていたのですが、ふと登ってみた明るい疎林に白っぽい花が咲いていたのです。実のところ、最初はピンときませんでした。なにしろ、新潟で久しぶりに出逢いたいと思っていたのはマキノスミレの方だったのです。中間的な個体を多く見てきました。それらに比べれば、これは迷うことなくシハイスミレです。花色がとても白っぽいのが気になります。良い芳香がしました。
 因みに、良く展開した葉を10サンプルだけ無作為に選んで、葉身の先頭から基部の垂れ下がった部分までの長さと、最も広い部分の幅をメジャーで測ってみました。長さは22mmから35mmで平均は28.8mm、幅は16mmから22mmで平均は18.4mmでした。縦横比が1.27から2.12で平均1.56という結果から、上の5枚の葉を見ても一目瞭然ですが、決して細長い葉とは言えません。
2010/04/29


シハイスミレかな? マキノスミレ・・・かな?


 シハイスミレとマキノスミレの境界線に悩み、または興味を持つ方が多いのは周知のことですが、主要な分布地から遠い東北地方のリポートに目が留まりました。武田眞一氏は岩手植物の会会報(No.46, 2009)で、実地調査および標本の検討によりシハイスミレの分布を確認したことと、三陸沿岸南部にマキノスミレが分布せずにシハイスミレばかりのエリアがあることを報告して、県内の分布地図でシハイスミレとマキノスミレの住み分けが見えるとしています。同時に、狭葉変種と呼ばれるマキノスミレの広葉型と解釈できる個体群について言及しています。
 シハイスミレとマキノスミレの違いについて、葉の形状、立ち方、光沢、裏面の色と変化等を基準に考えられています。その葉裏面の色と変化に焦点を当てますが、井波一雄氏の「日本スミレ図譜*(出典:N001) 」では、「(シハイスミレは)裏面濃紫色で夏になるも消えない」、「(マキノスミレは)夏葉において葉裏の紫色は消失して光沢ある淡緑紫色に変化してしまう」と説明しています。浜栄助氏WHO!の「原色日本のスミレ*(出典:G001) 」でも「(マキノスミレは)次第に裏面の紫色が薄れて淡緑色になるものが多い」としています。これで基準の一つとして分かりやすいと認識していましたが、形態の変化が複雑で著しい近畿地方では、シハイスミレにおいても多くは色が消失するとされています。
2009/11/02
 2016年2月に発表・審査されたシハイスミレに関する大学院生の学位論文をネット上に見ることができます。一般論としてシハイスミレとマキノスミレの境界線は近畿地方としながら、マキノスミレの分布域に当たる東日本に点在するシハスミレについて、DNAの塩基配列を基に系統解析した結果、西日本のシハイスミレと遺伝的に酷似していて遺存集団(個体群)であるとしています。こうした研究成果が情報として簡単に入手できると良いですね。
 シハイスミレとマキノスミレは、勿論、近縁ですが、DNAのITS領域というエリアの塩基配列で「識別できる」としています。一方、シハイスミレには日本海側と太平洋側の2系統があり、その太平洋側の個体群について、塩基配列の類似性からヒメミヤマスミレとの「交雑を経て生じた可能性」を示唆している点がおもしろい。なんとなく、なるほど~!とニヤついてしまいますね。
2017/07/08


 シハイスミレとマキノスミレの交雑種(マキノシハイスミレと呼ぶ方がいるようです)の話を聞くことがあり、関東甲信越エリアでは、それと思しき個体群を見かけます。
 敢えて、出典の明示を控えますが、この組み合わせは不稔と語る資料を読んだことがありました。交配実験の結果なのだろうと拝察しますが、前述の関東甲信越や岐阜など、両種の境界エリアに住んでいる方の理解を得られる意見でしょうか。実際に歩いてみると、「これ、どっちやねん!」と吠えたくなるような個体群が溢れています。あっちとこっちで表情が異なり、どっちつかずの個体群がいっぱいある環境を見れば、不稔と断定されても理解が難しいのではないでしょうか。試験に当たっては回数や方法、実験者を変えて判断、発表する慎重さが必要ではないかと思われました。因みにDNA解析結果があり、両種の頻繁な戻し交雑が判明しています。
2021/11/24

シハイスミレ シハイスミレ
シハイスミレ
東京都 2017年4月10日

(つぶやきの棚)徒然草

 (2000/05/14) Latest Update 2026/10/05 [1,500KB]

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