ハマニオイタチツボスミレ [裸名(俗称)] (浜匂立坪菫)
神奈川県(三浦半島) 2010年3月20日
神奈川県(三浦半島) 2013年3月21日
東京都 2014年3月31日 植栽 この時、初めて栽培品を拝見しました
分類 |
タチツボスミレ類 |
学名 |
基本種 |
ニオイタチツボスミレ Viola obtusa Makino |
変種 |
ハマニオイタチツボスミレ[俗名] Viola obtusa Makino var. lucida Hid.Takahashi, nom. nud.
in Flora-Kanagawa Association, Flora of Kanagawa 1988:952 (1988)
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品種 |
テリハニオイタチツボスミレ Viola obtusa f. nuda (Ohwi) F.Maek. |
【参考】 |
ケナシニオイタチツボスミレ Viola obtusa f. nuda (Ohwi) F.Maek. |
由来 |
obtusa : 鈍形の、円味を帯びた、lucida:輝く、明るい、艶がある、洗練された |
外語一般名 |
海岸性品種とされ、植物体全体が無毛で、花色が濃く、葉は大きめで光沢がある。 その他は母種に準ずる。 |
茎の形態 |
生育環境 |
分布 |
国内 |
海外 |
補足 |
花の特徴 |
形状 |
色 |
距 |
花期 |
花柱 |
芳香 |
補足 |
葉の特徴 |
形状 |
色 |
補足 |
種の特徴 |
形状 |
色 |
補足 |
根の特徴 |
絶滅危惧情報 |
基準標本 |
染色体数 |
参考情報 |
その他 |
花茎が赤い。外見では、テリハニオイタチツボスミレと分ける程の差異は見い出せない。 |
神奈川県(三浦半島) 2010年3月20日
ハマニオイタチツボスミレもテリハニオイタチツボスミレと同様に情報がすっきりしていません。裸名もしくは俗称ということになります。名前が示す通り、海岸性品種という位置づけでありましょう。
「葉に光沢あり」と「植物体全体が無毛」という二つのキィワードでは、ハマニオイタチツボスミレとテリハニオイタチツボスミレを区別することはできないようです。もう少し詳しく観察できないものかと、自生地に出かけてみました。さて、結論ですが、明確な差は見出すことができないようです(笑)。その地方で呼ばれている名前と考える方が素直だと思われます。あえて表現すれば、テリハニオイタチツボスミレの葉の方が蝋やワックスを塗ったような艶が強く、一方、ハマニオイタチツボスミレは自然な軽い光沢があるために、少し黒っぽいく見えます。ただし、海岸性というポイントを除いて、別名にするには及ばないというイメージを拭えませんでした。
内陸と違って、この自生地は気温が高いのか、既に白っぽい果実がちらほらと見られました。
2010/03/21
神奈川県(三浦半島) 2010年3月20日
さて、この長い地上茎はどうしたことでしょうか。ツルタチツボスミレとも少し違って、節からの発根は全く見られず、枝分かれもせずに徒長しています。タチスミレ程度の立ち上がり剛性もありませんので、地面を匍匐する性質です。観察した時は、花を咲かせているハマニオイタチツボスミレの葉と形状が異なるので、雑種か、個体変異か、とにかく特殊なものかも知れないと困ってしまいました。ただ、この細長い三角状披針形で切形に近い基部を持った葉が、ニオイタチツボスミレの花後に展開する茎生葉に似ていると思った段階で、正体が見えてきました。
先端は新しい葉ですが、大きめの葉の方がかなり傷んでいることからも、この匍匐する地上茎は越冬していることが分かります。良く見ると花が咲いた形跡もあるようです。これはハマニオイタチツボスミレの越冬した匍匐枝(茎)だということでしょう。他にも、同地区で同様の茎が見られていることが分かりました。ただ、テリハニオイタチツボスミレと説明されていたので、話が一致しなかったのです。蛇足ながら、この地にはハマニオイタチツボスミレとテリハニオイタチツボスミレ双方の記録が見られますが、おそらく同じものではないかと訝っています。
2010/11/11
ハマニオイタチツボスミレとテリハニオイタチツボスミレについて、前者は海岸性、後者は内陸性と見なせば、なんとか納得できそうです。一本化できないのであれば、最低限、同地域の報告例については、まとめるべきなのかも知れませんね。
2021/08/18
調べた限りですが、ハマニオイタチツボスミレの学名は「神奈川県植物誌(1988年版)」に登場して以来、未だに裸名扱いのままのようです。一方、同植物誌にも関与されている高橋秀男氏は、ハマニオイタチツボスミレとみなすべき個体群について、1980年の「神奈川県のスミレ」でテリハニオイタチツボスミレという名前を使用して説明しています。ただ、「~単なる無毛品ではなく、あきらかに海岸に適応した一型であり~」として、無毛品に対して与えられたテリハニオイタチツボスミレという名前を、仕方なく『海岸性の変異』にも使っているという氏の意向が伝わってきますね。
後日、二通りの名前が使われる始めます。確認できる情報がなくて勝手な想像の域を出ませんが、これが使い分けの理由であろうと思われます。これなら、テリハニオイタチツボスミレという名前はなかったことにして、海岸性で光沢がある変異にはハマニオイタチツボスミレ、無毛で光沢を感じる変異には(別名である)ケナシニオイタチツボスミレを使用するか、もしくは、区別しないことにするのが妥当ではないでしょうか。
2022/01/10